自死遺族になった人にどう対応すればいい?周りの人ができることはある?

こんにちは。私は兄を自死で亡くした自死遺族です。

仲良くしている人の家族や大切な人が突然自死・自殺で亡くなった時、何と声をかけたら良いか悩むことはありませんか?

相手がふさぎ込んだり不安定になっている・・なんとか元気になってほしい・・自分にできることは?

今回は「自死遺族になった人への対応」について、自死遺族の立場からお伝えします。

あくまで私の意見です。ご参考になれば幸いです。

目次

自死遺族になった人に周りの人が対応できることは多くない

ちょっと否定的な言葉でごめんなさい。ちゃんと理由があるので読んでいただけると嬉しいです。

大前提に、「支えたい」と思う人の存在は、本当にありがたいと思います。

何かできることは100%絶対にない、ということではもちろんありません。

しかし実際に「何かしてあげよう」とか「何かしてあげたい」という思いからの言動は、本人にとってあまり役に立たないことが多いんです。どのくらいかというのは関係性やその人の性格、経過した年数とそのときの心境によってさまざま。

ひとつだけ言えることは、遺族の方は想像を絶する苦しみや悲しみを抱えているということ。

その苦しみや悲しみは、経験していない人が「何とかできる」レベルではまずない、ということを知ってほしいんです。

言うまでもありませんが、大切な人を自死で亡くされた方が一番悲しみが深いですよね。頭がぐちゃぐちゃな状態だったり色々な感情が渦巻いています。その渦中にいるときはなかなか親切を受け入れられないときがあるんです。でも、気にかけてくれる人の存在に救われたということを後から気づくことも多いと思いです。

「何かしてあげたい」という思いの強い人は「何かをする」よりも「しないでいよう」を選択した方が良い

「周りの人が対応できることはない」というのは「何かをしてあげたい」という思いを否定するわけではありません。

気にしてくれる人がいるということはとてもありがたいことです。

ここで言いたいことは「その人が今、あなたに助けを求めているか?」ということを丁寧に観察してみてほしいということです。

親切は「相手が望んでいる」ことに応えて初めて親切になります。

https://twitter.com/xxxyuzukkoxxx/status/1354051972576534528?s=20

私自身も友人から声をかけてもらった時にそれが善意の言葉と分かっていても、その言葉に傷ついたりモヤモヤしたことが何度もあります。

まずは様子をみることが本当に大切

「何かをしてあげたい」「何か言葉をかけたい」という相手を思った気持ちでした言動でも、遺族の方が求めていない限りは遺族の方の負担や悩みを増やしてしまうこともあります。

人の言葉にとても敏感になってしまうので、何を言われてどういう気持ちになるかは本人にも分かりません。

けれども自死遺族の方の中には「親切で言ってくれた」という相手のことを優先してしまい、「そうじゃないんだけどなぁ」という自分の主張をせずにモヤっとする人が多いんです。

遺族の「考えることの数」を増やさないためにも、様子をみて適切な距離をとることも優しさだと私は思います。

何かをするならお線香をあげに行く・お花を届ける

意気消沈の状態の人に言葉で元気づけるのは難しいと感じませんか。私はよく感じます。言葉の無力さといいますか。何か言えば言うほど空振ったり、最悪の場合誤解されたり。

「言葉って難しい」「日本語って難しい」ってよく耳にするワードですよね。

なので何かをするなら言葉より行動。おすすめなことはシンプルにお線香・お花です。

私は以前、仕事上で少しだけ関わった方の息子さんが自死で亡くなられました。親しい方ではなかったので言葉をかけられるわけもなかったけど、何もせずにはいられませんでした。

葬儀から半月ほど経ったころ、アレンジされた花を持ってお線香をあげに訪問しました。電話もせずにいきなり行ったので驚かれてはいましたが、すぐに上がらせていただけました。

お花はとても喜んでくださいました。(喜ぶという表現が当てはまるかは微妙なところ)

自分の立場で考えたとき、お線香とお花はたぶん一番嬉しいです。シンプルがいいですね。直接訪問しなくても、お花なら定期便で贈るサービスがあります。



こちら”HitoHana”のサービスの利用しやすい点

  • お花の色とボリュームを選べる
  • 1週間毎~4週間毎と頻度を選べる
  • その週だけキャンセルすることもできる(送付準備される前まで)
  • いつでも解約できる

こちらのインスタグラムで写真が見れますよ。私は見るだけで癒されます。お花っていいなぁ。

https://www.instagram.com/hitohana_tokyo?utm_source=ig_web_button_share_sheet&igsh=ZDNlZDc0MzIxNw==

遠方でなかなか訪問できないとき、相手の住所が分かれば、利用してみるのも良いかもしれません。

定期便ではなくて一回きりのほうがいいなぁと思えば、近所のお花屋さんから送るのが良いと思います。

定期便だとやめどきが難しいですよね。相手も負担に思ったら悲しいですし。

自死遺族の方が抱えている思いに対応するのは大変なこと

先ほども書きましたが、遺族の方は想像を絶する苦しみや悲しみを抱えています。

どんなに信頼している友人でも、苦しみや悲しみの渦中にいる遺族の気持ちに介入することはとても難しいときがありますよね。

「どうすればいいんだろう?」「なんて言えばいいんだろう?」と周りの人が考え込んでしまうことになれば、自死遺族の方は申し訳ない気持ちになったりして、心の負担が増えてしまいます

対応が難しいのは遺族の気持ちがぐるぐる変わるから

大きなショックを受けると出てくる感情と段階、回復までのプロセスが一般的にはあります。

否認、怒り、悲しみ、受容と大きなショックを受けた時の気持ちの順序がありますが、特に自死遺族にとってはその通りなことは少ないと私は感じます。

悲嘆のプロセス

悲嘆のプロセス

  • 第一段階 精神的打撃と麻痺状態
  • 第二段階 否認
  • 第三段階 パニック
  • 第四段階 怒りと不当感
  • 第五段階 敵意とうらみ
  • 第六段階 罪悪感
  • 第七段階 空想形成・幻想
  • 第八段階 孤独感と抑うつ
  • 第九段階 精神的混乱とアパシー(無関心)
  • 第十段階 あきらめー受容
  • 第十一段階 新しい希望ーユーモアと笑いの再発見
  • 第十二段階 立ち直りの段階ー新しいアイデンティティの誕生

悲嘆を経験するすべての人がこの12段階を経るわけではありません。また、このプロセスを経る場合でも、順番通り全ての段階を経る人もいれば、順番が異なる人もいます。

引用 アルフォンス・デーケンの12の悲嘆のプロセス|突然の喪失への心構え

セオリー通りではないことを知ってほしい

例えば、大切な人を自死で亡くして「そんなはずがない!」という様な「否認」の気持ちが出てきたとします。

次に「罪悪感」が強くなり、「否認」は過ぎたんだと思ったらまた急に「否認」が湧き出てくるという様なこともよくあることです。

本人が自分で調べた結果「今自分は怒りの段階なんだな」「孤独感を感じるけど以前よりは落ち着いているのかもしれない」などと自分の心の動きの目安にする

周りの人が「あの人は最近あきらめている様子だから回復が近いんだな」などと勝手に判断し、それを良かれと思って伝える

本人が自分のことを分析したり客観的に見る分には役に立つと思います。しかし周りの人が勝手に決めつけたり憶測をすることはしない方が良いでしょう。

「明日どういう気持ちになるか」は遺族自身にも分かりません。一日の中でもぐるぐると気持ちは変わるし、行ったり来たりもしてとても複雑です。

「なんとなく、気持ちの落としどころを見つけられた」と少しプラスの気持ちになる日がある。でもそれが毎日続くとは限りません。

これは理解しがたいかもしれませんが、「亡くなってほっとした気持ちが強い」という人もいます。でも「ほっとした」という本音を言うとどう思われるだろう?倫理的にアウトだよね・・・と考えて誰にも気持ちを話せずにいる人も。

人の気持ちは安易に想像はできないし、しない方が良いでしょう。

「笑っている=元気になった」ではない

大切な人を自死で亡くした方と、最初はなかなか話せなかったり連絡が途絶えたりすることがあると思います。そういう時には距離をとらざるを得ないですよね。

少し時間が経って、自死遺族の方が出かけたり笑ったりと通常の日常を過ごしていると「元気になったんだ」と思うと思います。

遺族にとっては「元気になった」と言われると傷ついたりモヤモヤする人もいます。

「元気になった」という言葉は「もうふっきれたんだね」「乗り越えたんだね」という意味にも聞こえることがあります。

ふっきれたり乗り越えることは本人が思うことで周りが決めることではありません。

かといって腫れ物に触るような扱いをされることを望んでいるわけでもありません。

職場であれば首を突っ込まずに淡々と一緒に仕事をすれば良いと思います。近所の人なら本人にも他の近所の人にも何も言う必要もありません。いつものように日々を続けることが大切だと感じます。

友人の立場であれば「その人と遊びたい」と思えば様子をみつつ誘ってみれば良いと思います。でも「今のその人に会ってもな・・」と躊躇するなら「今は会わないでおこう」と距離をとって良いと思います。

元気になってほしいと、心配してくれているのはよく分かるしありがたいことです。

「元気になってほしい」を押し付けない

自死遺族の方本人も忘れていたりする出来事。「ちょっとした問いかけ」や「ちょっとした質問」をされることによってその忘れていた出来事を思い出すことがあります。

思い出すことで落ち込むこともあるし、反対に良い思い出を思い出したりすることもあります。

私個人の意見ですが

「配慮した質問」はOKで「こうなんだね、と決めつける言い方」はNGです。

周りの何気ない一言から、遺族の方は「そうじゃない!勝手に決めつけないでほしい!」と激しい怒りを抱くことが多々あります。

でも、親切で言ってくれている気持ちは分かるので「決めつけないで」とは言いづらいんです。

こちらの動画では自死遺族としての気持ちを語られています。後半では周りの人に話せない難しさもお話されています。

自死遺族の方のお話を実際に聞くと「アドバイスなんてできない」「かける言葉もない」そう思うかもしれません。実は私はそれで良いと思っています。

良かれと思って言った言葉が外れてしまうと、遺族の方の怒りや苦しみを増やしてしまいかねません。

私も自死遺族の立場ですが、同じ自死遺族の方と話す時はかなり言葉には意識をして話します。

自死遺族の方に対応できるとしたら物理的な援助(中途半端ならしない)

問題が起きた場合、お手伝いができること。それが「気持ちの面」「物理的な面」の二つあります。

自死遺族の方へもしも何か手伝いができるとしたら、気持ちの面よりも物理的な面かなと私は思います。これは意外に思うかもしれません。

  • 公的なことの手続き
  • 公的機関への相談
  • 電話相談
  • 自助グループの分かち合いの会

自死遺族の方が必要とすれば、自治体の相談窓口や電話相談などの情報が書かれたパンフレットをそっと渡すくらいで良いでしょう。

特定非営利活動法人 全国自死遺族総合支援センター

自死遺族相談ダイヤル(自死遺族のための電話相談)

03-3261-4350

毎週木曜日11:00~19:00
毎週日曜日11:00~17:00

自死遺族支援弁護団

大切な方を自死で亡くした方の法律相談

全国自死遺族法律相談ホットライン
(弁護団の弁護士が直接対応致します)

電話番号050-5526-1044
※2021/2/15より番号が変わりました
受付時間毎週水曜日(祝日を除く)
12:00~15:00

弁護士法人 ライフパートナー法律事務所内
自死遺族支援弁護団事務局
(ホットラインの受付時間以外のご相談)

電話番号06-6949-8277
受付時間月曜日から金曜日(祝日を除く)
9:00~18:00

認定NPO法人 グリーフケア・サポートプラザ

自死遺族傾聴電話(悲しみの傾聴)

03-3796-5453

(3月からは毎週木曜日と土曜日、週2回、傾聴電話を再開します。木曜日:12時~16時 土曜日:12時~16時)

自死遺族の問題は「身内のこと」であることが多いので「どこまで踏み込んでいいか」はそれぞれ普段の付き合いの度合いによりますよね。

「心配」という理由で土足で踏み込むのなかなか危険です。

距離感ってとても難しいですよね。今までの距離感とは変える必要もありますしね。大切な友人ならなおさら放っておくのも難しいのは分かります。

距離感の取り方が分からない、教えてほしいという方はこちらに連絡を。

大切な人を自死で亡くされた方、お話うかがいます 兄を亡くした自死遺族の私。あなたの心の内をお聞かせください

自死遺族の方への電話サービスと書いてありますが、自死遺族の方への対応の仕方や距離感の取り方などもお伝えできます。お気持ちもしっかりと聴きますので対応などでモヤモヤされている方はご連絡いただけたらと思います。

自死遺族の方が明らかに健康が損なわれていたり、日常生活が困難になっている場合は自治体の生活支援や病院受診をおすすめした方が良いでしょう。

しかし中途半端な支えはかえって遺族の負担になります。どのくらい仲が良いか、どのくらい踏み込んで話せるのかを考えて言動に移したほうが良いと思います。

そして、支える方も無理をしないでほしいのです。まずはご自身の生活を一番にしてください。余裕があればお線香をあげたり、お墓参りしたり、お花を贈る。このくらいが一番受け取りやすい親切だと私は思います。

まとめ

今回は「自死遺族になった身近な人への対応」について

  • 「何かした方が良いか」より「しないで見守る」こと
  • 気持ちを決めつけた言い方をしないこと
  • 物理的な対応は距離感に気を付けること

を主にお伝えしました。

自死遺族は病人ではありません。信じて見守ることが自死遺族にできる最大の優しさだと私は思います。

「見守る優しさ」「適切な距離をとる」ことは難しいですが、いつかきっと思いは伝わると思うんです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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