家族や夫婦、身近な人が自死で亡くなった。それは事故や病気で亡くすこととは違う苦しみが生まれます。(事故や病気で亡くされた方と、悲しみを比べているのではありません。)
「時が傷を癒す」というのは本当だろうか?それは受けた傷の種類によるんじゃないか?
世間でいわれる励ましの言葉は、自死遺族には当てはまらないことが多いなと私は感じます。
そうはいっても、ここでは「苦しみが永遠に続く」ことを言いたいのではありません。
自分なりの心の置き場所は、自分がもがいた上にあるのかなと思っています。
ほんの1mmでも1分でも、この記事を読む方の「気持ちの置き場所」が作られたらなと願っています。
自死遺族の不安や苦しみの根本は「分からない」こと
なんでこんなことになったんだろう?
なんで相談してくれなかったんだろう?
本当に急だった。笑っていたのにどうして?
何に苦しんでいたんだろう?予想はするけど・・・。
自死遺族の苦しみの中には「なんで」がたくさんあります。
私は兄を自死で亡くしました。そのときの記事がこちら
本人の、本当の「心の内」を聞いた人っているんだろうか。
その心の内を私が聞いたら、本人が自死を選んだことに納得できるんだろうか。
そんなことはきっとない。「死んでも仕方ない理由」なんて無いと信じたい。
こんな風にぐるぐるぐるぐると、答えの出ない問答がずっと続くんです。
でも答えは本人が持っています。だから答えは「分からない」んですよね。
「分からない」ことを「分かる」「知る」にしたいと思うのは自然なことです。
だからこそ、分からないことを分からないままにできない。
どんな気持ちでいたのか、思いとどまることはできなかったのか、いつから苦しんでいたのか、相談できる人はいなかったのか。
本人がどう思っていたのかが知りたい。「知ってどうする」というのは置いといても。
「分からない」という答えのない永遠の問いが、自死遺族の苦しみのひとつです。
自死遺族にとっての思い出は自分の記憶に頼るしかない
記憶って本当にあいまいです。例えば、過去に一緒にいた人同士で思い出話をしたとします。お互いに、言うことが全然違うという経験ありませんか?「そんなこと言ったっけ?」という感じ。
自死で亡くなった本人を思うときにでてくることは、「何がそんなに苦しかったんだろう」ということです。
毎日関わっていた家族でさえ、その答えが分からないことがありますよね。
その答えのヒントは、もう、自分の記憶をたどって考えるしかないんです。あいまいな記憶を。
「そういえばあのとき、なんか微妙な表情してたな」とか。
「あのとき、なんとなく声がちょっと暗かった」とか。
「あれが何かのサインだったんだろうか?」と。これもぐるぐる繰り返します。
「会社のあの上司に何か言われたんだろうか?」「恋人とケンカしたんだろうか?」
自分が知っている範囲で、想像して補完する。でも、たぶん違うんだろうな・・・。
私の場合、アルコール依存の父とうつを抱えている母という家庭環境で、兄が一番ダメージを負っていたんだろうか、とよく考えます。
躁鬱だった兄は、ずっと前から苦しんでいたんだろうか。薬のせいでまともに考えられる状態じゃなかったんだろうか。
そうかもしれないし、全然ちがうかもしれない。
こんなことをまたぐるぐると考える。その繰り返しなんです。
アーティフィシャルフラワー(造花)・フェイクグリーン専門店PRIMA(プリマ)オンラインこの繰り返しがひとつの「あきらめ」
こうしてぐるぐると考える。答えがないことは分かっている。またぐるぐる考える。その繰り返し。
この「らせん」そのものを受け入れること。それがひとつの「心の置きどころ」だと私は思っています。
ある意味「あきらめ」とも言えます。
そのときそのときに湧く感情を、変におさえないこと。できることはそれぐらいなんです。
答えを無理に埋めようとしなくても良い。埋めたくなったらまたぐるぐる考えても良い。それは苦しいことだけど、苦しいからって考えを止めると、余計に苦しくなる気がします。
あきらめついでに、私は「楽になること」「心が軽くなること」をあきらめました。
あくまで私の場合です。
だって、こんなに大変な思いをしたんだから。心が重いのは当たり前だよ。何年も、ずっと。
私は兄が好きでした。小学生のころは楽しかった。
これから、どんどん兄がいないほうの年月が多くなっていきます。
それはすごくすごく寂しいです。せっかく兄弟で生まれてきたのに。
楽になることをあきらめたら、「寂しい」という素直な気持ちがでてきました。
私がずっと、感じないようにしていた感情です。「親を支えなければ」と思い込んで精いっぱいだったとき、フタをしていた自分の素直な気持ち。
最近それを感じることができてやっと、少しだけホッとしたような。そんな気持ちでいます。
「寂しい」という心の置き場所。しばらく大切にしたいと思います。
また考えが変わるかもしれません。そうなったら、そのときに考えよう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
本紹介
大切な人を自死で亡くされた方々の思いを集めた一冊。
色々な立場の人が、それぞれの気持ちを綴られています。
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